長編『返事は、港で』 第1章

小学四年 ― ハブと黒糖

No.1

はるかへ

先生が、はるかに手紙を書きたい人は書きなさいと言ったので書きます。べつに書きたかったわけじゃないです。

はるかがいなくなってから、席がえをしました。ぼくはまどがわの一番うしろになりました。となりは山本です。山本は給食の牛にゅうを毎日ぼくにくれます。ぼくはそんなに牛にゅうが好きじゃないです。

あまみ大島は、どんなところですか。ハブがいるってお父さんが言ってました。かまれたら死ぬって言ってました。気をつけてください。

あと、はるかがかしてくれたけしゴム、まだぼくが持ってます。返したほうがいいですか。送ります。

さようなら。

たくみ

*

No.2

たくみへ

手紙ありがとう。先生がぜったい書かせたんだと思うけど、うれしかったです。

ハブは、まだ見てない。おばあちゃんは、ハブは夜に出るから夜は草むらに行くなって言う。でもおばあちゃんは夜に草むらでトイレする。ぼくの家はトイレが外にある。(ぼくじゃない。わたし。まちがえた。たくみの手紙がぼくぼく書いてるから、うつった)

島は、海がすごい青い。横浜の海とちがう色。みどりっぽい青。学校は全校で二十三人。わたしのクラスは四人。四人のうち二人がいとこ同士。

こっちの言葉がむずかしい。「ありがとう」は「ありょうた」。「おいしい」は「まーさん」。おばあちゃんはずっとこっちの言葉でしゃべるから、半分わからない。わからないとき、にこにこしてる。そしたら、だいたいなんとかなる。

けしゴムは、あげる。いらなかったら山本にあげて。

No.2って書いたのは、たくみの手紙を No.1 ってことにしたから。番号つけたら、なんかかっこいいと思って。

はるか

*

No.3

はるかへ

No.3 です。

番号つけるの、いいと思います。ぼくもやります。

大変なことがありました。手紙を書いていたら、うちの犬のジローが、書きかけのやつを食べました。半分食べました。だから、これは二回目に書いた手紙です。一回目のほうが、おもしろいことが書いてありました。なんて書いたか、わすれました。

トイレが外にあるのは、こわくないですか。ハブは。

山本に、けしゴムのことを言ったら、「いらない」と言われました。なので、まだぼくが持っています。

こっちは、夏休みになりました。プールに行きました。はるかがいつも一番に飛びこんでいたのを思い出しました。今年は、だれも一番に飛びこまなかったです。先生に怒られるからです。

たくみ

*

No.4

たくみへ

黒糖を入れておきます。島のおかし。黒いけど、あまいです。

(二日後にたした文)

郵便局の人に、黒糖を封筒に入れたら、とけるかもしれないって言われた。夏だから。でも、もうのりではっちゃったので、そのまま出します。とけてたら、ごめん。

トイレは、こわい。夜は、おばあちゃんを起こして、ついてきてもらう。おばあちゃんは、トイレの外で、島の歌をうたって待っててくれる。たぶん、ハブよけ。そういう意味の歌かは知らない。

ジローに、よろしく。

はるか

*

No.5

はるかへ

黒糖、とけてました。

封筒の中で、黒糖と手紙が一つになっていました。はるかの手紙は、半分くらい、黒糖の味がしました。ジローがまた食べようとしたので、手で守りました。

読めたところだけ読みました。トイレの話、読めました。おばあちゃんの歌の話も読めました。そのあとは、黒かったです。

また送ってください。今度は冬に。

たくみ

読み終えて、どうでしたか

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