泣ける話 38選
思いきり泣きたい夜に。読んだあと、少し軽くなる短い物語。
通夜の寿司
祖母の通夜の晩、東北の実家に親戚が集まった。寿司桶の数で、大人たちがもめはじめた。
第二日曜日
離婚して、月に一度だけ会えた娘。父の手帳に残った、七年分の第二日曜日。
第八幸栄丸
八十六歳の祖父が、五十年乗った漁船を売ることになった。引き渡しの朝、孫は港についていった。
面談室B
会社の方針で、二十年一緒に働いた部下に、辞めてくれと言う役が回ってきた。
山羊のメイ
昭和三十年代の信州の家で、小学生の私が乳をしぼっていた山羊。修学旅行の年に、いなくなった。
段ボール三箱
引っ越しのバイトで運んだ、おじいさんの全財産。
あめゆじゅとてちてけんじゃ
死の床の妹に「雨雪を取ってきて」と頼まれた宮沢賢治。
南極に残された犬たち
置き去りにされた十五頭の樺太犬と、一年後の再会。
はやくきてくだされ
字を知らなかった母が、アメリカの息子・野口英世に書いた手紙。
六千人の命のビザ
本国の命令に背き、ユダヤ難民にビザを書き続けた外交官・杉原千畝。
渋谷駅の秋田犬
帰らない主人を、十年近く駅で待ち続けた犬・ハチ。
ジリリリ
二年間部屋から出てこない息子の部屋の前に、父が置いた目覚まし時計。
別れの曲
戦争でピアノを奪われた祖母が、八十歳で出た初めての発表会。
宇宙へ持っていくもの
宇宙飛行士になりたかった弟の「持っていくものリスト」。
母の検索履歴
亡くなった母のスマートフォンに残っていた、娘についての検索。
原付の音
荒れていた高校時代、毎朝原付で迎えに来た担任の最期。
桜の木の下の家族写真
毎年同じ桜の下で撮った家族写真の、三十七枚目。
留守番電話
亡き妻の声が残る家の電話に、毎晩かけた夫。
青いランドセル
入学前に亡くなった息子のランドセルを、知らない子に譲った。
百十二枚
毎年百枚以上の年賀状を筆で書いた祖母が、最後に残した束。
隣の席のハンカチ
母の危篤で乗った新幹線、隣に座った老紳士がしてくれた話。
待合室のココア
深夜の救急病院の待合室で、見知らぬ女性と交わした一時間。
閉店の日の棚
五十年続いた町の本屋が、最後の日に作った特別な棚。
よしこ
逃げたインコが見つかったとき、祖父の前で言った言葉。
モカのお葬式
五歳の娘が、はじめて命の終わりに向き合った朝。
軒下の札
毎年ツバメを待っていた祖母が施設に入った春、空き家に帰ってきたもの。
カートの散歩
歩けなくなった老犬を、カートに乗せていつもの道を歩いた。
ハーネスを外した日
十年間の盲導犬が引退する前の日、最後の散歩。
五時十分の玄関
父が帰ってくる時間に、老犬は玄関で待ちつづけた。
だし巻き卵
三人組の一人がいなくなってからも、年末の居酒屋で頼みつづけるもの。
いつもの土曜日
最後の外出許可で、妻が選んだのはいつもと同じ一日だった。
毎日のプロポーズ
妻のことを忘れた夫が、面会のたびに言う一言。
裏返しの「め」
字が書けない母が、娘の入学式の朝にテーブルに置いた紙。
最後のキャッチボール
野球を嫌いにさせた父が、病院の中庭で言ったこと。
二十歳の封筒
施設で育った僕に、成人式の朝、園長先生が渡した封筒。
半分の歩幅
息子の顔を忘れた父と、毎朝歩く川沿いの道。
送信されなかった下書き
母の古い携帯に残っていた、七年前の夜の下書き。
塩むすびの味
料理が壊滅的な父が、八年間握りつづけた具なしのおにぎり。