昼寝の許可
日曜の午後一時半。昼ごはんの食器を洗い終わったところで、立ったまま目が閉じかけた。
二歳の娘は一時間前にやっと寝た。五歳の息子は夫と公園に行っている。今なら、洗濯物をたたんで、保育園の名前シールを貼って、来週の献立を考えられる。
そう考えたら、流しのふちに手をついたまま動けなくなった。
昼寝なんて、娘が生まれてから一度もしていない。寝ている子どもの横でスマホを見ることはあっても、自分が寝るのは違う気がしていた。母親が昼間に寝ているあいだに何かあったら、と思う。何か、が何なのかはわからない。
キッチンタイマーを手に取った。十五分に合わせた。
十五分だけ。
リビングのソファに横になった。クッションが顔に当たって、柔軟剤のにおいがした。天井に、息子が去年貼ったシールの跡が残っている。
目を閉じた。
次に聞こえたのは、玄関の鍵が開く音だった。
「ただいまー!」
飛び起きた。タイマーを見ると、鳴り終わって止まっていた。時計は二時二十分。五十分寝ていた。
どうしよう、と思った。何か、が起きていたらどうしよう。
娘は隣の部屋でまだ寝ていた。口を開けて、両手を上にあげて、バンザイの格好で。
夫と息子がリビングに入ってきた。息子の靴下が砂だらけだった。
「ママ寝てた?」
「……ちょっとだけ」
「いいなあ」
夫は何も言わずに冷蔵庫から麦茶を出して、コップを三つ並べた。一つを私の前に置いた。
「顔にクッションの跡ついてる」
鏡を見に行った。左のほっぺたに、格子の模様がくっきりついていた。笑ってしまった。
洗濯物は夕方に夫がたたんだ。息子のパンツが三枚、裏返しのままだった。名前シールは貼れなかった。来週の献立も決まらなかった。
何も起きなかった。
その夜、娘を寝かしつけるとき、いつもより一回少なく、あくびをした。
来週の日曜も、タイマーを十五分に合わせるつもりだ。たぶんまた鳴っても起きない。
読み終えて、どうでしたか