創作友情約2分

入学式の日の顔

中一の五月から、わたしはクラスで無視されていた。

きっかけは、たぶん、ない。気づいたら誰も話しかけてこなくなって、班を決めるときに余って、給食は机をくっつけてもらえなかった。先生は気づいていたと思うけど、何もしなかった。

美術の時間に、ペアでお互いの似顔絵を描く授業があった。わたしは当然余った。もう一人、余った子がいた。美咲ちゃん。

美咲ちゃんも一人でいることが多かった。でもそれは、休み時間にずっとノートに絵を描いているからで、わたしとは種類が違った。

美咲ちゃんは、ほとんどしゃべらなかった。わたしの顔をじっと見て、鉛筆を動かした。見られるのが恥ずかしくて、わたしは窓の外ばかり見ていた。わたしの描いた美咲ちゃんは、正直、宇宙人みたいになった。

授業の終わりに、絵を交換した。

美咲ちゃんの絵の中のわたしは、笑っていた。口を開けて、目がなくなるくらい。

「こんな顔してないよ、わたし」

この一か月、笑った覚えがなかった。

美咲ちゃんは、ちょっと困った顔で言った。

「入学式の日、あなたの後ろの席だったの。帰りに、お母さんと写真撮ってたでしょ。校門のとこで。そのときの顔」

覚えていない。そんな顔をしていたのか。

「あと、わたしの絵、宇宙人みたいでごめんね」とわたしは言った。

「……ちょっとね」と美咲ちゃんは言って、初めて笑った。前歯に矯正の金具がついていた。

次の日から、美咲ちゃんはわたしの隣で給食を食べるようになった。机をくっつけるとき、ガタンと大きな音がして、クラスの何人かがこっちを見た。美咲ちゃんは気にしなかった。

話すことはそんなに多くなかった。美咲ちゃんは食べながら絵を描いていた。わたしはそれを見ていた。行儀が悪いと先生に一回怒られた。二人とも。

美咲ちゃんは今、イラストレーターをしている。去年、本の表紙の仕事をしたと連絡が来た。本屋で見つけて買った。表紙の女の子は、口を開けて、目がなくなるくらい笑っていた。

似てるかどうかは、わからない。わたしは自分の笑った顔を、あまり見たことがない。

#心温まる話 #元気が出る話

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