おつきさまの おるすばん
くもりの よるは、おつきさまは おるすばんです。
くもが あつい ふとんみたいに かかって いるので、おつきさまが いくら ひかっても、したの まちには とどきません。
「つまんないなあ」
おつきさまは くもの うえで ひとりごとを いいました。
はれている よるは たのしいのです。いぬの さんぽを している おじさん。じゅくの かえりの おねえさん。まどから てを ふる こども。みんなが ときどき うえを みて、「あ、まるい」とか「きょうは ほそいね」とか いってくれます。
くもりの よるは、だれも うえを みません。
おつきさまは ためしに、いつもより ちょっと つよく ひかって みました。くもの ふちが ほんの すこし しろく なって、おしまい。
そのころ、まちの 三がいの まどで、ゆいちゃんが カーテンを あけていました。
「おつきさま、いないね」
おとうさんが いいました。「くもの うしろに いるよ。みえないだけで」
「ほんとう?」
「ほんとう。くもの うえは、いつも はれてるんだ」
ゆいちゃんは しばらく そらを みていました。まっくろで、ほしも ひとつも ありません。
それから ゆいちゃんは、まどガラスに はーっと いきを かけて、ゆびで まるを かきました。
「これ、おつきさまの ぶん」
まるの なかに、にこにこした かおも かきました。
くもの うえの おつきさまには、もちろん みえません。
でも そのよる、ほんの すこしだけ、くもが うすく なった ところが ありました。ゆいちゃんの いえの まうえでした。
つぎの あさ、まどガラスには まだ まるが のこっていました。いきの あとが かわいて、うっすらと しろく。
ゆいちゃんは それを けさないで、ようちえんに いきました。
読み終えて、どうでしたか