創作学校・先生約4分

石の連絡帳

十月一日(水)

【担任より】今日、たいちくんのランドセルがあまりに重そうだったので、本人に聞いて、中を見せてもらいました。石が十一個入っていました。いちばん大きいものは、ぼくのこぶしくらいあります。全部に名前がついているそうで、教えてもらいましたが、半分くらいしか覚えられませんでした。持ってくるのをやめさせたいわけではないのですが、肩が心配です。ご家庭でも少し話していただけると助かります。上原

【母より】すみません、気づいていませんでした。私が夜勤で先に出るので、朝は自分で準備しています。言っておきます。

十月二日(木)

【担任より】今日は石は三個でした。ありがとうございます。ただ、道具箱の中に八個ありました。昨日の分を、学校に置いて帰ったようです。

【母より】本人に聞きました。「持って帰ったら、また持ってこなきゃいけないから」だそうです。理屈は通っていると思います。

十月七日(火)

【担任より】図工で、石に絵を描く時間をつくりました。石はこちらで河原のものを用意したのですが、たいちくんは自分の石を使いたいと言うので、いいことにしました。顔を描いていました。ぼくの顔だそうです。眉毛が、ぼくの三倍くらいの太さでした。

【母より】夜勤明けに読みました。先生のお顔をまだ拝見したことがないので、太さについては何とも言えません。授業参観、今回も行けそうにありません。すみません。

十月九日(木)

【担任より】休み時間に、石のことで、けいたくんとけんかになりました。けいたくんが校庭で拾った石を、たいちくんが「それは本物じゃない」と言ったのが始まりです。けいたくんが押して、たいちくんが押し返して、二人とも膝をすりむきました(保健室で消毒してあります)。最後は二人とも謝りました。本物の石と本物じゃない石の違いは、ぼくには最後までわかりませんでした。

【母より】ご迷惑をおかけしました。けいたくんのおうちには、私からも連絡します。

本物じゃない石というのは、たぶん駐車場の砂利のことです。川で拾った石だけが本物、というのが、うちの子の決まりです。前に父親がそう言ったのを守っています。父親とは今は一緒に住んでいないので、訂正できる人がいません。

十月十四日(火)

【担任より】生活科で「秋をさがそう」の散歩に行きました。みんながどんぐりや落ち葉を拾う中、たいちくんは下ばかり見ていて、どんぐりを一つも拾いませんでした。班のまとめの時間に困っていたら、けいたくんが自分のどんぐりを四つ分けてあげていました。この前のけんかの相手です。二年生のことは、まだよくわかりません。

【母より】日曜日、久しぶりに休みがとれたので、多摩川に連れていきました。二時間半いました。私は寒くて、途中から車で待っていました。帰りに石を六個持って帰ってきて、玄関で「学校の分」と「家の分」に分けていました。学校の分は二個で、一つはけいたくんにあげるそうです。

十月十五日(水)

【担任より】二個でした。一つは、朝いちばんにけいたくんに渡していました。けいたくんが「これ、本物?」と聞いて、たいちくんが「本物」と答えていました。

もう一つは「先生の」と言って、ぼくの机に置いていきました。平たくて、灰色で、白い線が一本入っています。プリントを押さえるのにちょうどいいので、使わせてもらっています。

【母より】先生、一つ聞いてもいいですか。先生も子どものころ、何か集めていましたか。

十月十六日(木)

【担任より】牛乳びんのふたです。小学校の六年間で、四百枚くらいありました。中学に上がった春、母に捨てられました。その話をすると、母はいまだに「あれは衛生的じゃなかった」と言います。

#心温まる話 #くすっと笑えていい話

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